最終更新日:2024年2月1日
冬は風邪や感染症への注意が必要ですが、実は心の病も引き起こしやすい季節だとご存知でしょうか。そこで今回は、冬に気をつけたい心の健康について、原因と対策についてご紹介いたします。
冬季うつ(ウインターブルー)について
特定の季節になると出現するうつ病は、季節性感情障害といいますが、特に秋~冬にかけて現れる症状は、冬季うつ(ウインターブルー)と呼ばれます。冬になると「寝てもなかなか布団からでられない」「甘いものやこってりしたものが欲しくなる」といったことを感じる方はいませんか?冬はエネルギーを体に蓄えて寒さを乗り越えようとしますが、気分の落ち込みなどが起こることで、うつ症状となってしまう人がいます。一般的なうつ病に比べて、冬季うつは過食・過眠傾向にあり、春先の暖かい季節になると回復していくのが特徴です。
冬季うつのサイン
不安になる
疲れやすい
イライラする
倦怠感がある
過眠(日中にも強い眠気を感じる)
過食(ご飯・麺類・パンといった炭水化物や甘いものが食べたくなる)
冬季うつの原因
冬季うつは日照時間と関係していると考えられています。普段私たちは日光を浴びて体内リズムを整えていますが、冬は夏と比べて日照時間が短くなります。朝、日が昇る前に仕事に向かい、日が沈んだ夕方に帰宅する方や、寒さで外に出ることが億劫になるといった方もいらっしゃるのではないでしょうか。日照量が不足することで、脳内で働くホルモンの一種「セロトニン」の分泌量が減ってしまいます。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、感情や精神面、睡眠などに関係し、自律神経を整える働きがあります。十分に太陽の光を浴びていないとセロトニンの合成が低下してしまい、疲れやすく気分が落ち込むといった悪循環につながります。
セロトニン分泌を高める食事
セロトニンは日光を浴びるだけでなく、食事によって増やすことができます。そこでポイントとなるのが、セロトニンの材料となる必須アミノ酸の「トリプトファン」と「ビタミンB6」、そして「炭水化物」です。
トリプトファン
「必須アミノ酸」という言葉を聞いたことがありますか?タンパク質を形成する20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で作ることができますが、残りの9種類は体内で作ることができません。この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼び、食事からとる必要があります。
ー必須アミノ酸ー
バリン・ロイシン・イソロイシン・メチオニン・ヒスチジン・リジン(リシン)・フェニルアラニン・スレオニン・トリプトファン
この中でもセロトニン合成に必要となるのがトリプトファンです。トリプトファンが脳に運ばれることで、セロトニンがつくられます。
ートリプトファンを多く含む食品ー
乳製品・・・牛乳、ヨーグルト、チーズなど
大豆製品・・・豆腐、納豆、豆乳、厚揚げ、高野豆腐、みそなど
バナナ
穀類(白米や玄米)
ナッツ類
トリプトファンについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
ビタミンB6
ビタミンB6は水溶性ビタミンの1つで、アミノ酸の代謝を助ける働き、免疫機能の維持、皮膚や粘膜の抵抗力の増進、赤血球のヘモグロビンの合成など生体機能に欠かせない栄養素です。トリプトファンとビタミンB6が結びつくことでセロトニンが作られます。
ービタミンB6を含む食品ー
鮭
ささみ
赤身魚(マグロ、カツオ)
バナナ
ごま
酒粕
セロトニンを作るおすすめレシピもあわせてご覧ください♪
炭水化物
ご飯やパン、麺類、いも類といった炭水化物はセロトニン合成の効率を上げます。
ー白米の適量(1食当たり)ー
白米100gを同じカロリーに置き換えると
食パン6枚切り1枚
乾麺1/2束(50g)
生麺2/3玉(160g)
もち1枚半(70g)
じゃがいも中2個(240g)
最後に
セロトニン分泌は有酸素運動によっても活性化されるため、食事とあわせて取り入れましょう。また、心の不調が辛いときは、無理をせずに家事や仕事のストレスを減らすことも大切です。心の休息も大切にしながら、食事や生活習慣のポイントを取り入れてみてください。
参考文献
医歯薬出版株式会社 「日本人食品成分表」 文部科学省 2021年八訂
照明学会誌 「光と気分 第86巻 第6号」 村上純一 山田尚登 2002年
文響社 「うつ・適応障害・双極性障害心の名医7人が教える最高の治し方大全」 三村 將 奥平智之他 2021年