先に募集しておりました『第12回「つなげる、やさしさ。」健診・人間ドック体験記コンクール』の入賞10作品が決定しました。
本コンクールは、健康寿命の延伸に向けた取り組みの一環として、健診や人間ドックを受け、病気の早期発見や生活習慣の改善などにつながった体験、受診を通して感じたこと、思ったこと、伝えたいことなどをまとめた体験手記などを募集し、受診へのきっかけづくりとしていただくことを目的に開催しています。
今回、令和7年12月中旬から令和8年3月25日まで作品を募集したところ、県内外より193編のご応募がありました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
入賞作品
最優秀作品賞 1作品
●岡 昌子さん(三重県)
早く知るという勇気 ー 母が隠した理由
優秀作品賞 3作品
●トンちゃんさん(石川県)
これからもよろしく
●健康大好きママさん(東京都)
健康をつなぐバトン
●太田 明理紗さん(東京都)
若いころでも人間ドックへ ー仕事を愛するみんなへー
JA全厚連特別賞 1作品
●石川 野雅さん(静岡県)
父と過ごせたあと六年
佳作 5作品
●前崎 美香さん(富山県)
小さなキズがつくった大きなきずな
●二宗 洋輔さん(愛媛県)
母の「大丈夫」を疑った日
●青池 恵津子さん(山梨県)
キャンサーギフト
●古井 菜月さん(京都府)
まだ間に合う、すべてのひとへ
●まつこさん(広島県)
定期検診受けて良かったと心から思う
最優秀作品賞
「早く知るという勇気 ー 母が隠した理由」 岡 昌子さん
「私は健康だから。心配しなくていいの」
母は、そう言って笑っていた。
健診も受けているし、大丈夫。
そう繰り返しながら、がん保険まで解約していた。
母が亡くなったあと、タンスの奥から一通の封筒が見つかった。
そこには、精密検査を勧める健診結果が入っていた。
赤い数値。
再検査の文字。
私はその場に座り込んだ。
なぜ、隠したのだろう。
母は、弱音を吐かない人だった。
「迷惑をかけたくない」が口癖だった。
「病院なんて、行けば病気見つかるんだから」
冗談めかして、そうも言っていた。
あれは冗談ではなかったのかもしれない。
見つかることが、怖かったのだ。
昭和を生きた女性にとって、
自分の病気は“家族への負担”だったのだと思う。
検査費用。
治療費。
家事ができなくなること。
父の世話。
私たちへの心配。
「私さえ我慢すればいい」
きっと、そう思ったのだろう。
保険を解約したのも、
「もう大丈夫だから」と言いながら、
本当は“なかったことにしたかった”のかもしれない。
病名を確定させない限り、
まだ健康でいられる。
そんな心理が、どこかにあったのではないか。
けれど、現実は待ってくれなかった。
見つかったときには大腸がんは進行していて、
半年間の闘病の末、母は旅立った。
私は毎朝、母に野菜の生ジュースを作った。
父が帰る時間になると、母は少しでも明るく見えるようにと、かわいいパジャマに着替えた。
「ウサギみたいだね」と言うと、
「ぴょん」と、いつもの調子で笑った。
あのとき母は、何を思っていたのだろう。
怖かっただろうか。
後悔していただろうか。
私は何度も考える。
もし、あの封筒を私に見せていたら。
もし、もう一度検査を受けていたら。
母の選択は、家族を守るためだった。
でも結果として、私たちに深い後悔を残した。
だから私は決めた。
怖くても、知る。
母を見送ったあと、初めて人間ドックを受けた。
まだ子どもは小さかった。
結果を待つ時間、
「もし異常があったら」と考え、手が震えた。
けれど封筒を開けた瞬間、胸に広がったのは安堵だった。
異常なし。
その一枚の紙が、
こんなにも未来を守るものだと初めて知った。
健診は、病気を探すものではない。
家族との時間を守るための行動だ。
母は、家族に心配をかけたくなくて隠した。
私は、家族を守るために毎年受ける。
世代は変わる。
守り方も変わっていい。
「大丈夫」と言い切る前に、どうか確かめてほしい。
精密検査の通知を引き出しにしまわないでほしい。
怖いからこそ、受けてほしい。
早期発見は、命の時間を増やす。
そして、残される家族の後悔を減らす。
母の封筒の赤い数値は、今も私の胸に残っている。
だから私は、今日も検査を受ける。
それは、
母から学んだ、
命をつなぐための静かな勇気だ。
本コンクールの入賞作品は、後日作品集として発行いたします。当サイトでも公開いたしますので、しばらくお待ちください。
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