最終更新日:2026年11月1日

11月14日はインスリンを発見したカナダのバンティング医師の誕生日にちなんで制定された「世界糖尿病デー」ですが、皆さんは糖尿病リスクについてご存知でしょうか。
厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査によると、日本国内で「糖尿病が強く疑われる者」は約1,100万人と推計されており、増加傾向にあります。さらに、糖尿病の可能性を否定できない予備軍は約700万人とされています。両方を合わせると、約1,800万人が糖尿病の影響を受けている推計になり、これは日本人の7人に1人が該当する計算になります。
糖尿病は自覚症状が少ないまま進行することも多いため、正しい知識と日々の習慣がとても大切になります。今回は、糖尿病についての正しい理解と今日からできる予防のポイントについてご紹介します。
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなり過ぎる病気です。体のエネルギー源であるブドウ糖は、本来、血液中の濃度が一定の範囲に保たれるように膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって調整されています。しかし、インスリンの分泌量が減ったりインスリンの働きが低下したりすると血糖値が高くなり過ぎてしまい糖尿病になります。

厚生労働省 広報誌WEBマガジン「厚生労働」2024年11月号 より
放っておくとどうなる?糖尿病の合併症
糖尿病の初期段階では、のどが渇く、トイレが近いなどの症状が現れることもありますが、体の痛みや明確な体調不良といった自覚症状がほとんどありません。そのため、「忙しいから」「症状がないから」と放置されがちです。 しかし、高血糖状態が長く続くと血管が静かにダメージを受け続けるため、糖尿病が進行し合併症を引き起こします。主な糖尿病による合併症について、細い血管の障害・太い血管の障害・その他の3つに分けて説明します。
細い血管の障害(三大合併症:「し・め・じ」)
毛細血管などの細い血管が傷つく事で発症する合併症です。頭文字をとって「しめじ」といわれます。
し:神経障害(しんけいしょうがい)

初期症状
足の指先のしびれ、冷感、ピリピリとした痛み、感覚の麻痺。
進行すると…
痛みを感じにくくなるため、足に傷ができても気づかず、怪我や靴擦れから細菌感染を起こして「壊疽(えそ)」となり、最悪の場合は足の切断に至ることがあります。また、自律神経障害により立ちくらみや便秘・下痢を起こすこともあります。
め:網膜症(もうまくしょう)

初期症状
自覚症状はほぼありません。
進行すると…
眼底の細い血管が詰まったり破れたりし、視力低下や飛蚊症(ゴミが見えるような症状)が現れ、最終的には失明に至ります。日本人の成人の失明原因の第3位(緑内障、視神経疾患等に次ぐ)となっています。
じ:腎症(じんしょう)
初期症状
自覚症状はほぼありません。
進行すると…
血液を濾過する腎臓のフィルターが破壊され、体内に老廃物が溜まります。症状(むくみ、息切れ、だるさ)が出た段階ではかなり進行しており、最終的には人工透析が必要になります。新規で人工透析を始める原因疾患として、糖尿病性腎症は第1位です。
太い血管の障害(大血管障害:「え・の・き」)
心臓や脳などの大きな血管が動脈硬化を起こすことで発症する合併症です。
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(え)下肢の動脈…足の壊疽
(の)頸動脈…脳卒中
(き)冠動脈…虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症) |
それぞれの合併症の頭文字をとって「えのき」といわれます。
え:えそ(壊疽)
足の太い血管が詰まり、血流が悪くなる「末梢動脈疾患(PAD)」が原因で、足の組織が壊死します。最悪の場合には、足の切断が必要です。
の:脳卒中(のうそっちゅう)
脳の血管が詰まる「脳梗塞」のリスクが、糖尿病でない人に比べて約2倍高くなります。麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあります。
き:虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
心臓に酸素を送る冠動脈が詰まる・狭くなる病気です。糖尿病患者の場合、神経障害を併発していると心筋梗塞が起きても胸の痛みをほとんど感じない(無痛性心筋梗塞)ことがあり、発見が遅れて命に関わるケースがあります。
その他の重要な合併症
歯周病
高血糖が続くと歯周組織の血管がもろくなり、歯周病の発症・悪化リスクが高まります。歯周病が悪化すると血糖コントロールが難しくなり、血糖コントロールが悪化すると歯周病が悪化するという相互関係があります。
認知症
アルツハイマー型認知症の発症リスクが1.5倍、脳血管性認知症の発症リスクが2.5倍に高まることが分かっています。
今日からできる予防・対策
糖尿病は、遺伝的な要因に加えて食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が大きく関係しています。だからこそ、特別なことをするのではなく、日々の生活習慣を整えることで予防や進行防止が可能です。
健診結果を確認し、自分の状態を把握
直近の健康診断の結果を見直してみましょう。代表的な糖尿病に関する検査は下記のとおりです。
空腹時血糖(mg/dl):10時間以上絶食をした後の血糖値
| 正常域 | 境界域 | 糖尿病域 |
| ~99 | 100~125 |
126~ |
HbA1c(%):過去1~2か月の平均的な血糖を反映
| 正常域 | 境界域 | 糖尿病域 |
| 5.5 | 5.6~6.4 |
6.5 |
健診結果を確認してみて糖尿病域にいる方は、まずはかかりつけ医や近くの内科へご相談ください。また、すでに糖尿病の治療中の方は主治医の指示のもと通院・治療を継続していきましょう。
バランスの良い食事

食事では、主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスのよい食事を心がけ、エネルギーのとりすぎを防ぐことが基本です。また、血糖値の急激な変動を防ぐためにも食事は1日3食を規則正しくとり、まとめ食いや欠食を避けることも大切です。
食事の食べ方

食事の最初に野菜やきのこ、海藻類などの食物繊維を摂ることで、食後の血糖値急上昇を抑えられます。また、ゆっくりよく噛んで食べることで、満腹中枢が刺激され食べ過ぎの予防になります。
糖質の摂り方

清涼飲料水や菓子類に含まれる糖質は、速やかに体内に吸収されて血糖値を急激に上昇させてしまうため、取りすぎには注意が必要です。また、うどん+おにぎり、ラーメン+チャーハン、パスタ+パンなど炭水化物の重ね食べは、糖質の取り過ぎになり血糖値が上昇しやすいです。どちらか1品にするか、半量ずつにするなど工夫をしましょう。
日常生活での運動

一度に激しい運動をする必要はありません。普段より少し遠回りして10分多く歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、日常生活に運動をプラスし習慣化するだけでも、血糖値の改善の効果が期待できます。
まとめ
糖尿病は、日々の小さな習慣の積み重ねで予防できる病気です。まずは、「自覚症状がないから大丈夫」と過信せず、年に一度の健康診断をしっかり受け、自分の体の状態を正しく把握することが大切です。また、すでに糖尿病の治療を受けている方も、糖尿病合併症にならないために主治医の指示のもと、血糖コントロールを行うことが重要です。
ぜひこの機会に、ご自身の健診結果をチェックし、生活習慣を振り返ってみてはいかがでしょうか。
参考文献
厚生労働省 「令和6年国民健康・栄養調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66279.html(2026年8月24日アクセス)
日本医師会 「糖尿病治療のエッセンス(2022年版)」
https://www.med.or.jp/doctor/diabetes/pamphlet/000464.html(2026年8月24日アクセス)
日本生活習慣病予防協会
https://seikatsusyukanbyo.com/guide/diabetes.php(2026年8月24日アクセス)
国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター
https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html(2026年8月26日アクセス)


